1. 参議院選挙とは?――“もう一つの国会”の役割
日本の国会は衆議院と参議院の二院制。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数(今回125議席)が改選されます。選挙制度は「選挙区(都道府県選挙区+合区)」と「比例代表(全国区・非拘束名簿式)」の並立制。18歳以上が投票でき、公示から投票日までは17日間です。衆院より解散がないため、長期視点で法案の熟議と行政監視を担う“良識の府”とも呼ばれます。
2. 2025年参議院選挙の概要
今回の第27回参議院議員通常選挙は、2025年7月20日投開票・7月3日公示の日程で実施予定です。改選対象は選挙区74議席、比例代表50議席の計124議席+欠員1議席。参議院の定数は248なので、与野党の勢力バランス次第で憲法改正発議に必要な「3分の2」を再び確保できるかが注目されています。
また、昨秋の衆院選で与党(自民・公明)が過半数割れしており、石破茂首相率いる政権は「非改選を含め参院単独で与党過半数維持」を最低目標に掲げています :contentReference[oaicite:2]{index=2}。直近のNHK世論調査では内閣支持率34%、自民支持率27%と苦戦気味で、選挙区の1人区を中心に野党共闘が進むかもカギになります :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
3. 今回の主要論点――有権者が押さえるべき7テーマ
3-1. 生活防衛と物価高対策
エネルギー・食料価格の高騰と円安を背景に、賃金上昇が物価に追いつかない「実質所得マイナス」が続いています。自民党は20,000円給付+低所得層追加2万円の物価手当を公約するものの、NHK調査では63%が評価せず、施策効果が論争の的です。一方、立憲民主・共産・れいわは消費税率5%への時限的減税を主張。国民民主は「給料が上がる経済」へ成長投資と累進課税強化を訴えています。
3-2. 税制・インボイス・財政健全化
2023年導入のインボイス制度は中小事業者の事務負担を招き、廃止・凍結を掲げる野党が世論を喚起。れいわ・共産・立憲・社民は制度撤回、国民民主は抜本見直しを掲げる一方、自民・維新・公明は段階的簡素化で「2029年本格見直し」を提示しています。巨額国債残高を抱える中、防災・子育て・防衛費をどう賄うかが財源論争の焦点です。
3-3. 防衛費と憲法改正
ウクライナ侵攻後、NATO基準「GDP比2%」が国際標準となりつつあるなか、米国トランプ政権は日本に「3.5〜5%」を要求したと報じられました。石破首相は「数値目標より実効性重視」としつつ、防衛関係費を2027年度108,000億円へ拡大する方針です。自民・維新が憲法9条に自衛隊明記+緊急事態条項新設を推進するのに対し、立憲は「改正議論は否定しないが時期尚早」、共産・社民・れいわは条文維持を主張しています。
3-4. エネルギー・環境・脱炭素
再エネ比率36〜38%(2030年)を掲げる国のエネルギーミックスに対し、政党間の温度差は拡大。自民は「原発最大限活用+次世代革新炉促進」、公明は「安全最優先で限定的再稼働」、立憲・共産・れいわは「原発ゼロ・再エネ主力化」を訴えます。各党の環境政策比較表が有権者注目の資料になっています。
3-5. 少子化・子育て政策
出生数76万人(2024年速報)と過去最低を更新。政府は「次元の異なる少子化対策」で児童手当拡充、大学授業料無償の所得上限撤廃など総合政策を提示。一方、専門家からは「地方移住や関係人口だけでは不十分」と根本的構造改革を求める声が強まっています。自民・公明・国民は「教育国債」発行に前向き、立憲は高等教育費完全無償化を公約、維新は「3歳から高2まで完全給食」を掲げています。
3-6. デジタル・AIガバナンス
生成AIの急拡大を受け、AI基本法制定の是非が議論に。自民は欧米主導ルールを基に「安全保障と経済成長の両立」、立憲は市民参加型アルゴリズム監査を提案。維新はブロックチェーン活用の公文書管理改革を強調しています。規制とイノベーションのバランスが投資呼び込みにも影響します。
3-7. ジェンダー平等と人権
同性婚合法化・選択的夫婦別姓・LGBT理解増進法の実効性が争点化。立憲・維新・共産・社民・れいわが同性婚法制化を明記し、自民保守派は「家族観の変質」を理由に慎重姿勢。若年層の受け皿である参政党・日本保守党が“反ジェンダー”論点を争点化し、SNS上で存在感を高めています。
4. 各党のスタンス早見表(抜粋)
- 自民党:物価手当/防衛費増額/原発活用/憲法改正に前向き
- 立憲民主党:消費税減税5%/原発ゼロ/同性婚賛成/防衛費「必要最小限」
- 公明党:子育て支援強化/原発は限定再稼働/憲法改正慎重
- 維新の会:規制改革で賃上げ/統治機構改革/教育無償化財源は徹底歳出削減
- 国民民主党:給料を上げる経済/インボイス見直し/小さな政府+積極財政
- 共産党:消費税廃止/防衛費削減/原発ゼロ/憲法改正反対
- れいわ新選組:消費税ゼロ/大規模財政出動/社会保障徹底拡充
5. 選挙戦の注目ポイント
(1)1人区32選挙区の攻防――前回2022年は野党一本化が進まず21対11で与党優勢。今回は医療費・農業政策・防災予算が論点となる東北・北陸で激戦が予想されます。
(2)比例区の新人旋風――SNS発信力のある20〜30代候補が増加し、世代間ギャップが縮小。投票率50%台半ばが見込まれる中、若年層の“推し政党”が議席配分を左右します。
(3)ネット選挙の深化――「TikTok LIVE政見放送」や各党公式Discordサーバーなど新たなオンライン施策が投入。空中戦で女性・無党派層をどこまで掘り起こせるかが焦点です。
6. 今後のシナリオ――選挙後に何が起こる?
◆与党が単独過半数維持の場合――憲法改正手続きが秋臨時国会で具体化。防衛費増税案は2026年度先送り、経済対策は給付金中心で補正予算編成へ。
◆与党過半数割れ・改憲勢力2/3未達の場合――石破首相は党内から退陣圧力。自公維国の「改憲4党」の再編・連立論が浮上し、年末にも衆院解散カードが取り沙汰。
◆野党系連立が参院第1会派にの場合――法案審議が停滞し、2025年度予算成立が遅延。金融市場は円安加速リスクも指摘され、外国人投資家動向に注目が集まります。
7. まとめ:投票行動を「自分ごと」に変えるために
参議院選挙は「政権選択選挙」ではないと言われがちですが、税率・防衛費・憲法・子育て支援など中長期を左右する意思決定が託される重要な場です。候補者の街頭演説や政党マニフェスト、ファクトチェック付き記事を比較し、ぜひ“推し”ではなく“熟考”で1票を投じましょう。あなたの投票が、次の3年間の政策アジェンダを決定づけます
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