新年の仕事始めから数日が経ち、多くの企業で今月の給与計算事務が進められています。2026年に入り、特に注目を集めているのが「給与のデジタル払い(デジタル給与)」です。2023年の解禁から準備期間を経て、大手決済事業者によるサービスが揃ったことで、今月から本格的に導入・運用を開始する企業が急増しています。
「デジタル給与って、結局PayPayとかで貰えるってこと?」「銀行振込と何が違うんだっけ?」「自分も強制的に変えられるの?」――。本記事では、2026年現在のデジタル給与を取り巻く制度、背景、そして労働者が知っておくべき事実を客観的に解説します。
1. 【事実確認】デジタル給与(給与デジタル払い)の定義
デジタル給与とは、銀行口座を通さず、厚生労働大臣の指定を受けた「資金移動業者(決済アプリ運営会社など)」の口座に直接給与を振り込む仕組みを指します。
制度の法的根拠
労働基準法第24条には「賃金支払の5原則(通貨払、直接払、全額払、毎月1回以上払、一定期日払)」が定められています。
- 原則:賃金は「通貨(現金)」で支払わなければなりません。
- 例外の拡大:これまで銀行口座や証券口座への振込が「例外」として認められてきましたが、2023年4月の法改正により、一定の条件を満たした「資金移動業者の口座」への振込が新たな例外として追加されました。
- 2026年の現状:複数の大手事業者が「指定」を受け、企業側の給与計算ソフトとの連携が完了したことで、一般社員も選択可能な「実用期」に突入しています。
2. 【あれなんだっけ?①】銀行振込と何が違うのか?
労働者にとって、銀行振込とデジタル給与の決定的な違いは、資金の「受け取り先」とその「用途」にあります。
資金移動業者口座のルール
銀行口座とは異なり、デジタル給与を受け取る口座(PayPayや楽天ペイなどのアカウント)には、以下の法的ルールが課せられています。
- 上限額:口座残高の上限は原則100万円です。これを超える場合は、あらかじめ指定した銀行口座へ自動的に送金される仕組みが必要です。
- 現金化の義務:少なくとも月に1回は、ATMなどから手数料なしで1円単位まで現金として引き出せることが、指定事業者の条件となっています。
- 破綻時の保証:万が一、事業者が破綻した場合でも、預金保険制度に代わる「保証機関」による全額弁済が保証されています。
3. 【あれなんだっけ?②】強制的に変えられることはあるのか?
デジタル給与の導入にあたって、最も重要な事実は「労働者の同意」です。
「個別同意」の徹底
労働基準法に基づき、デジタル給与での受け取りはあくまで労働者の「選択肢」の一つです。
- 同意書の提出:企業は労働者に対し、デジタル給与の仕組みやリスクを説明した上で、個別に署名・捺印等による同意を得る必要があります。
- 強制の禁止:企業がデジタル給与を強制したり、同意しないことを理由に不利益な扱いをしたりすることは法律で禁じられています。
- 部分受取の可能性:「5万円分だけデジタル口座へ、残りは銀行口座へ」という分割振込も、労使協定や企業のシステム対応状況によっては可能です。
4. 【背景解説】なぜ2026年に本格普及しているのか
デジタル給与が今、急速に広がっている背景には、社会全体のキャッシュレス化と「採用競争」の激化があります。
採用力強化としての側面
2026年の労働市場では、人手不足を背景とした「福利厚生の多様化」が求められています。
- 利便性の提供:給与を受け取ってすぐにコード決済やECサイトで利用できることは、特にタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する若年層への訴求力となります。
- 外国人労働者の受け入れ:銀行口座の開設に時間がかかる外国人労働者にとって、スマートフォンで完結するデジタル給与は、生活基盤を整えるための重要なインフラとして機能しています。
5. デジタル給与にまつわる「数字」と「事実」
誤解されやすいポイントを整理します。
Q: ポイントで給与が支払われるのか?
A: いいえ。 支払われるのはポイントではなく「円(通貨価値)」です。受け取った後にアプリ内でポイント還元などは受けられますが、給与そのものは現金化可能な電子マネーとして入金されます。
Q: 会社側にメリットはあるのか?
A: 振込手数料の削減や、給与支払事務のデジタル化が挙げられます。 ただし、銀行振込とデジタル払いを併用する場合、事務負担が一時的に増えるケースもあります。
6. まとめ:2026年の働き方の新しい選択肢
本格的な運用フェーズに入ったデジタル給与について確認した事実は以下の通りです。
- 選択制の堅持:あくまで労働者が希望した場合にのみ利用できる制度である。
- 安全性の担保:100万円上限や全額弁済保証など、銀行口座と同等の安全策が講じられている。
- 社会の変化:「給与=銀行振込」という固定概念が薄れ、個人のライフスタイルに合わせた受け取り方が標準化されつつある。
これらの背景知識(あれなんだっけ?)を持つことで、会社から導入の案内があった際や、ニュースを見た際に、客観的な基準で判断を行うことができます。2026年は、お金の「受け取り方」から個人のマネーリテラシーが問われる時代となっています。


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