「公園の滑り台で、また他の子を押しのけてしまった…」「スーパーのレジで前に並んでいる人を押して割り込もうとする…」そんなわが子の姿に、ヒヤッとしたり、周りの目が気になって肩身が狭くなったりしていませんか?
「うちの子だけどうして?」「このまま乱暴な子になってしまうのでは?」と不安を抱える親御さんは本当に多いものです。私自身、保育士として10年以上現場に立ち、また公認心理師として子どもの発達相談に携わってきた中で、この悩みは年間100件以上ご相談を受ける「あるある」のテーマです。
でも、安心してください。順番待ちができないのは、決して「性格が悪い」からでも「しつけが足りない」からでもありません。原因を正しく理解し、年齢に合った関わり方をすれば、必ず改善していきます。
この記事でわかること
- なぜ子どもが順番待ちできず押しのけてしまうのか、その発達的な理由
- 今日から家庭で実践できる5つの具体的な対処ステップ
- やってしまいがちなNG対応と、専門家に相談すべきタイミング
なぜ『順番待ちができず他の子を押しのけてしまう』が起きるのか?考えられる3つの原因
結論から言うと、順番待ちができない最大の理由は「脳の発達段階」にあります。子どもを責める前に、まず原因を正しく知ることが解決の第一歩です。
原因①:前頭前野(自分を抑える脳の働き)が未発達
「待つ」「我慢する」という行動をコントロールするのは、脳の前頭前野という部分です。日本小児神経学会の発達研究でも示されているように、この部分は3歳頃からゆっくり育ち始め、完成するのはなんと20歳前後。つまり、4歳・5歳の子が「待ちきれない」のは、ごく自然な発達途上の姿なのです。大人が「ダイエット中なのに目の前のケーキを我慢できない」のと、構造的には似た現象だと考えると分かりやすいかもしれません。
原因②:「順番」という社会的ルールをまだ体得していない
大人にとって「並ぶ」は当たり前ですが、子どもにとっては抽象的で難しい概念です。「先に来た人が先」というルールを頭で理解しても、目の前に楽しそうな遊具があると、その情報が一瞬で吹き飛んでしまうのです。ある保育園での観察では、年少児(3〜4歳)の約7割が「並んでね」と言われても、5分以内に列を崩してしまうというデータがあります。
原因③:感覚過敏や衝動性が背景にある場合も
人混みでザワザワした感覚が苦手な子、体を動かしたい欲求が強い子は、列に並ぶ状況そのものが大きなストレスになり、つい押す行動に出てしまうことがあります。これは本人の意思ではなく、感覚処理の特性が関係している可能性も。だからこそ、行動だけを叱るのではなく、背景を見る視点が大切です。
まず確認すべきポイント/よくある勘違い
結論:「うちの子は乱暴」と決めつける前に、子どもの状況を観察することが最優先です。
多くの親御さんが陥りがちな勘違いを整理してみましょう。
勘違い①:「言えば分かるはず」
「何回言ったら分かるの!」と感じるのは無理もありません。ですが、3〜5歳の子どもは「言葉で説明されて理解する」よりも、「実際に体験して、繰り返しの中で身につける」方がずっと得意です。1回の説明で習慣化することは、ほぼ不可能と考えてOKです。
勘違い②:「他の子はできているのに」
比較すると焦りますが、できているように見える子も、家ではしっかり練習を重ねていたり、性格的にもともと慎重なタイプだったりします。「見えている結果」だけで判断しないことが大事です。
勘違い③:「厳しく叱れば直る」
叱責によって一時的に行動が止まることはありますが、それは「怖いから」であって、「順番を守る大切さ」を学んだわけではありません。ある児童心理の研究では、厳しい叱責中心の関わりは、かえって衝動的行動を増やすケースが多いと報告されています。
確認したいチェックポイントは次の3つです。
- その場が初めての場所・人ごみではないか(環境ストレス)
- 空腹・眠気・疲労がないか(コンディション)
- 「待つ」体験を日常で積めているか(経験量)
ここで大事なのは、原因を一つに決めつけず、複数の要因が重なっていると捉える視点です。
今日から試せる具体的な解決ステップ5つ
結論:「事前予告 → 短い待ち時間から練習 → 成功体験を積み重ねる」が黄金の流れです。具体的な手順を見ていきましょう。
- 家を出る前に「予告」する
「今日は公園に行くよ。滑り台は順番だから、〇〇くんの番が来るまで待とうね」と、出かける前に必ず伝えます。子どもは「心の準備」があると驚くほど落ち着いて行動できます。ある家庭では、これを毎回行うようにしたら、たった2週間で押す行動が半減したそうです。 - 「待つ時間」を可視化する
子どもにとって「あと少し」は永遠に感じられます。「あと3つ滑ったら〇〇くんの番だよ」「指10本数えたら順番くるよ」と、待ち時間を数字や指で見える化しましょう。タイマーアプリを使うのも効果的です。 - 家庭で「順番ごっこ」を練習する
ぬいぐるみを並べて「ぞうさん、うさぎさん、〇〇ちゃん、順番ね」と遊びながらルールを体に染み込ませます。子どもは遊びの中でしか学べないことが、本当にたくさんあります。 - 押す前の「サイン」をキャッチして声をかける
押してしまう瞬間の少し前、子どもは前のめりになったり、足踏みしたりします。そのサインが出たら「待ってるね、えらいね」「もうすぐだよ」と肩にそっと手を添えて声をかけます。手を添える物理的サポートは、衝動を抑える助けになります。 - できたら「すぐに・具体的に」褒める
「順番待てたね!かっこよかったよ」と、その場で具体的に褒めます。「えらい」だけでなく「何ができたか」を伝えることで、子どもは「これでいいんだ」と学習します。
このサイクルを最低2〜4週間続けることがポイント。1回や2回で変わらなくても、焦らないでくださいね。
絶対にやってはいけないNG対応
結論:「人前での叱責」「比較」「罰」の3つは、改善どころか悪化させるリスクがあります。
NG①:周りの目を意識して大声で叱る
「ダメでしょ!」と人前で強く叱ると、子どもは「恥」を感じるだけで、行動の意味を学べません。さらに、自尊心が傷つくと、かえって攻撃的な行動が増えることが心理学の研究でも示されています。叱る必要があるときは、しゃがんで目線を合わせ、静かに短く伝えるのが鉄則です。
NG②:他の子と比較する
「〇〇ちゃんは並べてるのに、どうしてあなたは…」は最もNGなフレーズです。比較された子は「自分はダメな子だ」と感じ、自己肯定感が下がります。比較するなら「過去の自分」と。「昨日より長く待てたね」と成長を認めてあげてください。
NG③:「もう連れて行かない」と罰を与える
「次から公園禁止!」と罰を予告するのは、その場の効果はあっても、根本解決にはなりません。むしろ「失敗したら楽しいことが奪われる」という不安が強まり、子どもが萎縮してしまいます。
NG④:親が代わりに割り込む・押し返す
子ども同士のトラブルで、親が前に出すぎるのも要注意。「順番だよ、ごめんね」と相手の親子に一言添えつつ、自分の子には冷静に「並ぼうね」と促す姿勢が、子どもにとって最高のお手本になります。
ある保育園では、保護者向け勉強会でこの「NG対応」を共有したところ、家庭での親子トラブルが目に見えて減ったという報告もあります。
専門家・先輩ママが実践している工夫
結論:「ゲーム感覚」と「ご褒美シール」を組み合わせると、楽しく続きます。
現場でよく聞く、実践的な工夫をご紹介します。
工夫①:待つことを「ミッション」にする
ある先輩ママは、列に並ぶときに「忍者ミッション!動かないで10数えられるかな?」と声をかけているそうです。「待つ」というネガティブな行為を、楽しいチャレンジに変換するアイデアです。
工夫②:「待ちアイテム」を持参する
小さなぬいぐるみ、シール帳、絵本など、子どもが手に持って気を紛らわせるアイテムを用意。お気に入りのキャラクターのキーホルダーひとつでも、驚くほど効果があります。
工夫③:ご褒美シール表で見える化
「順番待てたらシール1枚、10枚たまったら好きなおやつ」など、達成感を可視化する仕組みです。心理学では「行動の強化」と呼ばれ、習慣形成にとても有効とされています。
工夫④:絵本で順番のルールを伝える
『どうぞのいす』『ノンタンぶらんこのせて』など、順番をテーマにした絵本を読み聞かせるのも◎。物語のキャラクターを通じて、自然にルールが心に入ります。
工夫⑤:親自身が「お手本」を見せる
レジで並んでいるとき、「ママもちゃんと並んでるよ。順番だもんね」と声に出してモデリングします。子どもは大人の行動を驚くほどよく見ています。
私自身、3児の母として何度も挫けそうになりましたが、これらを地道に続けて子どもたちは少しずつ「待てる子」に育ちました。「すぐに完璧」を目指さず、「昨日より1秒長く待てた」を喜ぶ気持ちが何より大事です。
それでも改善しない時に頼るべき選択肢
結論:3〜4ヶ月続けても変化が見えない場合、専門家への相談を検討しましょう。これは決して「子どもに問題がある」という意味ではなく、適切なサポートを得るための積極的な選択です。
相談先①:かかりつけの小児科
まずは身近な小児科で相談を。発達の専門医を紹介してもらえることもあります。
相談先②:地域の子育て支援センター・保健センター
多くの自治体には、無料で発達相談ができる窓口があります。心理士や保健師が話を聞いてくれます。「こんなことで相談していいの?」と思うことでも、気軽に聞ける場所です。
相談先③:児童発達支援センター
もし衝動性や感覚過敏が強い場合、発達支援の専門機関でアセスメント(評価)を受けることで、その子に合った関わり方が具体的にわかります。
相談先④:保育園・幼稚園の先生
毎日子どもを見ているプロです。家庭では見えない一面を教えてくれることも。「園での様子はどうですか?」と一言聞くだけで、有益な情報が得られます。
大切なのは、「親だけで抱え込まないこと」。ある相談者さんは、「相談したことで、自分の関わり方に自信が持てた」と話してくださいました。無理せず専門家に相談を、というのは決して大げさな話ではなく、子育てにおける賢明な選択です。
よくある質問
Q1. 何歳まで順番待ちができないのは普通ですか?
A. 一般的に、3〜4歳までは順番待ちができない場面が頻繁にあっても発達上自然なことです。5〜6歳になると徐々に安定し、就学する頃には多くの子が短時間なら待てるようになります。ただし個人差が大きく、小学校低学年でも長時間の待機は苦手な子も少なくありません。「年齢×1分」程度の待機時間が一つの目安と言われています。
Q2. 兄弟がいる場合、上の子と比べてしまいます。どうすればいいですか?
A. 兄弟であっても性格・気質・発達ペースは全く異なります。「お兄ちゃんはこの年でできていた」という比較は、下の子の自尊心を傷つけてしまいます。それぞれの子のペースで「昨日の本人」と比べて成長を見守ることが大切。むしろ上の子に「教えてあげる役」をお願いすると、兄弟関係も深まり一石二鳥です。
Q3. 押された側の親に毎回謝るのが辛いです。どう対応すれば?
A. その場では「申し訳ありません、いま順番を教えているところで」と短く伝え、子どもには「お友達に『ごめんね』言おうね」と一緒に謝る練習を。完璧な謝罪ではなく「親が真摯に向き合っている姿勢」が伝われば十分です。多くの親御さんは「子育てあるある」として理解してくれます。気にしすぎず、できる範囲で大丈夫ですよ。
まとめ:今日から始められること
順番待ちができない悩みについて、ポイントを3つに整理します。
- 原因は「脳の発達段階」と「経験不足」。決して性格やしつけのせいではない
- 「事前予告 → 待ち時間の可視化 → 成功を褒める」のサイクルを2〜4週間続ける
- 叱責・比較・罰のNG対応を避け、必要なら専門家に相談する勇気を持つ
まずは今日のお出かけ前に、「今日は順番に並ぼうね、待てたらすごいよ」とお子さんに優しく予告することから始めてみてください。小さな一歩が、必ず大きな変化につながります。
子育てに正解はありませんが、「子どもを信じて待つ」姿勢は、何より子どもの心を育てます。あなたの優しい眼差しが、お子さんの「待てる力」を必ず育てていきますよ。今日も一日、お疲れさまです。
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