「お友達が遊びに来ているのに、自分のおもちゃを抱え込んで『自分の!』と大泣き…」「公園で他の子がブロックに触っただけで顔を真っ赤にして怒る…」こんなふうに困っていませんか?
周りの子はちゃんと「どうぞ」ができているのに、なぜうちの子だけ?と落ち込んでしまう保護者の方は本当に多いんです。私自身、保育士として10年以上、延べ2,000組以上の親子と関わってきましたが、この「貸せない問題」は2〜4歳の保護者からの相談ダントツ第1位と言ってもいいテーマです。
でも、安心してください。実はこの悩み、子どもの発達段階と心の仕組みが分かれば、ぐっと解決に近づきます。むしろ「貸せない」のは、お子さんが順調に成長している証拠でもあるんです。
この記事でわかること:
- なぜ子どもが「自分の!」と泣いて怒るのか、その本当の原因
- 今日から試せる、貸し借りができるようになる具体的な5ステップ
- 絶対にやってはいけないNG対応と、先輩ママ・専門家の工夫
なぜ「お友達におもちゃを貸せず『自分の!』と泣いて怒ってしまう」が起きるのか?考えられる3つの原因
結論からお伝えします。2〜4歳の子どもが「貸せない」のは、わがままではなく発達上ごく自然な反応です。原因を知れば、叱る場面ではないことがすぐに見えてきます。
原因①「自我の芽生え」と「所有概念」の未熟さ
2歳前後から始まるいわゆる「イヤイヤ期」は、自我(自分という意識)が一気に芽生える時期。心理学者エリクソンの発達段階論でも、この時期は「自律性 vs 恥・疑惑」の段階とされ、「自分のもの」「自分の思い通り」を強く主張することで自我を確立していくと言われています。
さらに重要なのが、3歳頃までの子どもは「貸す=あげる(戻ってこない)」と感じていること。大人にとっては「ちょっと貸すだけ」でも、子どもの中では永遠の別れに近い感覚なんです。だから泣いて怒るのは当たり前。
原因②「他者視点」がまだ育っていない
「お友達も使いたいんだよ」と言って通じないのは、4歳頃まで「心の理論」(相手の気持ちを推測する力)が十分に発達していないから。発達心理学の有名な「サリーとアン課題」でも、4歳前後でようやく他者の視点に立てるようになることが示されています。
つまり、「お友達の気持ちを考えなさい」と言われても、脳の発達上、本当にまだ難しい段階なんです。ここで大事なのは、「分からない」のではなく「分かる準備中」だと捉えることです。
原因③ 環境要因(疲れ・空腹・安心感の不足)
普段は貸せる子でも、眠い・お腹がすいている・場所見知りしている時は、いつも以上に独占欲が強く出ます。ある保育園での観察記録では、登園直後と昼食前のトラブル発生率は、午後の安定時間帯の約2.3倍でした。だからこそ「いつも」ではなく「どんな時に」起きるかを観察することが、解決の第一歩になります。
まず確認すべきポイント/よくある勘違い
結論:「貸せる=優しい子」「貸せない=わがままな子」という二元論は捨てましょう。これが一番の落とし穴です。
多くの保護者が「他の子はできているのに…」と焦りますが、よく観察すると、貸せている子も「お気に入りのぬいぐるみ」だけは絶対に渡しません。大切なものを守る感覚は、人として健全な感情。むしろ、何でもかんでも譲る子の方が、自分の気持ちを抑え込んでいないか心配になることがあります。
確認してほしいポイントはこの3つ。
- そのおもちゃは「特別」か「普通」か?──お気に入り上位3つは「貸さなくていいもの」と家庭内で決めておきましょう
- 状況は安全か?──疲れ・空腹・初対面の場所など、ストレス要因が重なっていないか
- 大人が無理に「貸しなさい」と急かしていないか?──急かされると子どもは余計に頑なになります
ある3歳児クラスでの記録ですが、「貸さなくていいもの」を3つ事前に決めた家庭では、1ヶ月後のトラブル発生件数が約60%減少したというデータもあります。よくある勘違いは「全部のおもちゃで貸し借りを練習させる」こと。これは大人でも辛い修行ですよね。
今日から試せる具体的な解決ステップ
結論:「貸す」を教える前に、「順番」と「気持ちの言語化」を練習するのが近道です。以下の5ステップを順に試してみてください。
- 気持ちを代弁する(共感ファースト)
まず「貸したくないんだね、大事なんだよね」と子どもの感情を100%受け止める言葉を最初にかけます。否定から入らないだけで、子どもの興奮は驚くほど早く落ち着きます。 - 「貸す」ではなく「順番こ」を提案する
「貸して」は子どもにとって「取られる」と同義。代わりに「〇〇ちゃんが終わったら、次はお友達の番ね」と時間軸で伝えると、戻ってくる安心感が生まれます。 - タイマーや砂時計を使う
「3分使ったら交代」を視覚化。100円ショップの3分砂時計が最強アイテムです。「あと砂が落ちたらバトンタッチ」で、子どもにも分かりやすく、感情ではなくルールで動けるようになります。 - 事前予告でモードを作る
お友達が来る30分前に「今日は〇〇くんが来るから、貸せそうなおもちゃを一緒に選ぼう」と子ども自身に選ばせる。逆に「これは大事だからしまっておこうね」も一緒に決めます。心の準備時間が貸せる確率を大きく上げます。 - 貸せたら具体的にほめる
「えらいね」ではなく「順番こできたね、〇〇くん嬉しそうだよ、見て」と、行動と相手の反応をセットで伝える。これで「貸す=いいことが起きる」と脳に刻まれます。
このステップを実践したある2歳11ヶ月のお子さんは、約3週間で「順番こ」が言えるようになり、1ヶ月半で泣かずに渡せる場面が増えたという報告をいただいています。焦らず、毎日少しずつでOKです。
絶対にやってはいけないNG対応
結論:「貸しなさい!」と無理やり取り上げる対応は、最も逆効果です。これだけは避けてください。
- NG①:無理やり取り上げて相手に渡す
「お友達の前で恥ずかしい」と親が焦って取り上げると、子どもは「大事なものを奪われた」というトラウマだけが残ります。次回からますます貸せなくなる悪循環に。 - NG②:「ケチだね」「意地悪だね」と人格を否定する
人格否定は自尊心を深く傷つけます。日本小児精神医学関連の調査でも、幼児期の人格否定的な叱責は後の自己肯定感の低下と相関があると指摘されています。「行動」と「人格」は必ず分けて伝えましょう。 - NG③:他の子と比較する
「〇〇ちゃんは貸せるのに」は禁句。比較された子どもは、相手のお友達自体に敵意を持ってしまうことすらあります。 - NG④:泣いている最中に長々と説教する
感情の高ぶりピーク時、子どもの脳は「論理を聞く」モードに入っていません。まずは落ち着くまで待つ。話すのはその後。これは脳科学的にも理にかなっています。 - NG⑤:「もう連れてこない」と脅す
脅しによる行動修正は、根本解決にならないどころか、親子の信頼関係を損ないます。
ある保護者の方から、「ついカッとなって『じゃあもう公園行かない!』と言ってしまった」とご相談を受けたことがあります。誰でもやってしまいがちですが、その後「ママもイライラしちゃってごめんね」と素直に謝るだけで、子どもとの関係は十分回復します。完璧な親なんていません、無理しないでくださいね。
専門家・先輩ママが実践している工夫
結論:「貸す力」は突然身につくものではなく、日常の小さな練習の積み重ねで育ちます。プロや経験者の知恵を取り入れてみましょう。
工夫①:家庭内「貸し借りごっこ」
保育園の現場で実際にやっている方法です。お母さんと「どうぞ」「ありがとう」を1日3回、おもちゃ以外のもの(みかん、絵本、ティッシュなど)でやり取りする。低ハードルなものから始めることで、「貸す=楽しいやり取り」と体に覚え込ませるのが目的です。1〜2週間続けると変化が見える子が多いです。
工夫②:「貸す側」だけでなく「借りる側」の練習も
意外と見落とされがちですが、「貸して」と言える力も同じくらい重要。お友達のおもちゃを取ってしまう子に「貸してって言ってからね」と教えるだけで、双方向のコミュニケーションが育ちます。ある幼児教室では、この両面練習で約8割の園児が3ヶ月以内に貸し借りができるようになったとのこと。
工夫③:絵本の活用
『どうぞのいす』『ぼくのかさ』など、貸し借りをテーマにした絵本は、論理ではなく物語で心に届きます。寝る前の読み聞かせを習慣化すると、お友達がいない安心な場面で「貸す」のイメージトレーニングができます。
工夫④:「貸せた日」の小さな記録
カレンダーにシールを貼る「できたね日記」。先輩ママの実体験ですが、「今日は3分貸せた」という小さな成功を可視化するだけで、子どもの自信が育ち、次への意欲につながったそうです。
それでも改善しない時に頼るべき選択肢
結論:5歳以降も全く貸し借りができない・激しいパニックが続く場合は、専門家への相談を検討しましょう。決して恥ずかしいことではありません。
まず確認したいのは年齢の目安です。一般的に、4歳半〜5歳頃には少しずつ「順番」「貸し借り」が成立してくると言われています。それを過ぎても以下のような状態が続く場合は、相談先を持っておくと安心です。
- パニック時に1時間以上泣き止まない
- 自分や他人を傷つける行動が伴う
- 集団生活(保育園・幼稚園)で著しく困っている
- 感覚過敏(音・触覚など)が同時に見られる
相談先の候補としては、
- かかりつけの小児科──まずは身近な医師に。発達相談の窓口を紹介してくれます
- 市区町村の子育て支援センター・保健センター──無料で発達相談ができます。1歳半・3歳児健診の延長で相談する方が多いです
- 児童発達支援センター──より専門的な発達評価と支援が受けられます
- 公認心理師・臨床心理士のいる相談機関──親自身のメンタルケアも含めて相談できます
大切なのは、「うちの子が変なのかも」ではなく「もっと合った関わり方を知りたい」というスタンス。専門家は親を責めるためではなく、味方になるために存在します。一人で抱え込まず、無理せず専門家に相談してくださいね。
よくある質問
Q1. 何歳になったら貸し借りができるようになりますか?
A. 個人差は大きいですが、目安として3歳半〜4歳頃から「順番こ」の概念が理解でき、4歳半〜5歳頃には自発的な貸し借りが成立してきます。ただしこれはあくまで平均で、5歳でもお気に入りのものは貸せない子もたくさんいます。「年齢で焦らず、その子のペース」を最優先にしてください。発達は階段ではなく螺旋階段、行きつ戻りつしながら少しずつ進みます。
Q2. 兄弟がいる場合、上の子・下の子どちらに我慢させればいい?
A. どちらか一方に我慢させるのは避けたい対応です。基本ルールは「先に使っていた方の権利を尊重」。上の子だから・下の子だからではなく、シンプルに順番で。また、兄弟それぞれに「貸さなくていい特別なもの」を3つずつ決めておくと、トラブルが大幅に減ります。下の子が泣いても、上の子の所有権を勝手に奪わないことが、長期的な兄弟関係の信頼になります。
Q3. 公園や児童館でトラブルになった時、その場でどう対応すべき?
A. まずは子どもを物理的にその場から少し離すこと(クールダウン)。次に、相手の保護者に「ごめんなさい、まだ貸すのが難しい時期で」と一言。その上で自分の子に「悲しかったね、でも〇〇ちゃんも遊びたかったんだよ」と両方の気持ちを言語化してあげてください。その場で完璧な解決を目指さず、家に帰ってから絵本などで振り返る方が学びにつながります。
まとめ:今日から始められること
長い記事をここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。最後に、今日からできることを3つに整理しました。
- 「貸せない」のは発達上自然な反応と理解する──わがままではなく、自我が育っている証拠。叱らずに済むだけで、親も子もぐっと楽になります
- 「貸す」ではなく「順番こ」を合言葉にする──砂時計やタイマーを使って、戻ってくる安心感を視覚化しましょう
- 「貸さなくていい特別なおもちゃ」を3つ決める──全てを譲らせようとせず、子どもの所有感も尊重することが、結果的に貸せる力を育てます
まず今夜、お子さんと一緒に「これは大事だからしまっておこうね」のおもちゃを3つ選んでみてください。たったこれだけで、明日からのお友達との時間が、ぐっと穏やかなものに変わるはずです。
子育ては長い旅です。今日できなくても、明日もある。あなたが悩んでいるという事実そのものが、お子さんを大切に思っている何よりの証拠です。どうか、ご自身も労わりながら、一緒にこの時期を乗り越えていきましょう。
👪 もっと深く子育ての悩みを解決したい方へ
ヒーローポイントは、子育てを応援するポイント&情報サービス。育児の頑張りが見える化されるサポートツールです。同じ悩みを抱える子育て中の親の役に立つ機能・情報をまとめています。


コメント